■マイナンバー制度

国民一人ひとりに番号を割り当てる「マイナンバー(共通番号)」の導入に向け、IT基盤の検討が進んでいます。システム構築には2000億円以上が投じられる見込みで、政府は購入(調達)を監督するCIO(最高情報責任者)を置き、一部を民間に開放する論議を始めました。

マイナンバー制度とはどんなものになりそうなんでしょうか?我々の生活は具体的にどう変わるのか?賛否の意見は?

●マイナンバー制度の概要とスケジュール

個人に割り当てた番号で、徴税や年金業務を効率化する「マイナンバー(共通番号)」制度。そのIT基盤の概要が見えてきた。制度を定めた「マイナンバー法案」は2012年7月の通常国会に提出され、審議入りを待っている。

 政府は並行して、IT基盤の整備に必要な予算確保や要件定義などを進めてきた。例えば、主要な新規システムを調達する内閣官房は、開発費分として2012年度に執行する410億円の予算を確保した。政府関係者の見通しでは、年金など関連システムの改修やICカードの発行費用、地方自治体の負担などの投資総額は2000億~4000億円の規模という。

 システム開発の失敗を防ぐため、政府は調達方法を抜本的に見直す。内閣官房の向井治紀審議官は
「相次いだ政府調達の失敗を踏まえ、従来の調達手法は改める」と明言。また調達を監督する専任の
CIOを置くなど、政府のIT戦略の改革にも取り組む考えだ。

 一部のIT基盤は民間開放の検討も進めている。個人に割り振るマイナンバー自体は慎重に扱うものの、制度のために新設するWebサイト「マイ・ポータル」などは官民で多目的に利用し、行政サービスの利便性を高める考えだ。

 

 

●必要性では与野党が一致

 国会では社会保障と税の一体改革を巡る折衝が先行し、6月下旬時点でマイナンバー法案の審議時
期は見えない。ただマイナンバーの必要性は野党も主張しており、焦点は法案の内容に移っている。
 自民党で汀政策に詳しい平井卓也衆議院議員は「マイナンバーを携帯電話などICカード以外の手段でも管理可能にするなど、現行法案にはいくっかの修正を要求する」と話す。政府で法案を担当する古川元久経済財政・国家戦略相は、野党の修正要求に「耳を傾けるべき意見もある」と含みを持たせる。

 現行法案が目標にするマイナンバーの導入時期は2015年1月だ。まずは国税システムや年金システムなどを改修し、システム単体で利用する。マイ・ポータルなど主要な新規システムは1年遅れて2016年1月からの運用を見込む。法案が今国会で通れば、今秋にもシステム調達の手続きに入り、今年度内に調達先のITベンダーを選定する。開発から運用までの期間は3年弱である。

●住基台帳を基に新番号を生成

 政府はシステム調達に向け、2011年秋にITベンダーからRFI(情報提供依頼)を求め、19社が応募した。 RFIを基に政府は要件定義や概要設計に取り組んだ。

 公開された資料によると、マイナンバー向けに主に新規開発するのは、内閣官房が調達する「情報提供ネットワークシステム丿個人番号情報保護委員会システム」「マイ・ポータル」と、自治体が共同設立する「地方公共団体情報システム機構」の運用する番号生成システムである。

 中でも中枢を担うのが、最大300億円程度を投じる見通しの情報提供ネットワークシステムだ。国税や年金などの行政システムと接続し、情報連携を仲介する。

 情報提供ネットワークシステムの稼働状況を監視し、個人情報が保護されているかを監査するため
に用いるのが個人番号情報保護委員会システムである。情報提供ネットワークシステムとの連携が前
提のため、一体での調達も検討している。

 マイ・ポータルは、個人が自分のマイナンバーの利用状況や、紐付く個人情報などを確認できるWebサイトである。年金や社会保障に限らず、様々な行政サービスの通知を送信する機能なども実装する予定で、民間活用の議論が最も進んでいる。

 番号生成システムは、住民基本台帳と連動してマイナンバーを国民に割り当てるために使う。具体
的には、住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)で導入された個人ごとに固有の「住民票コード」
を基に、マイナンバーを新たに生成する。住民票コードは11桁だが、マイナンバーの桁数や生成方法は
まだ未定という。

●番号はネットワークを通さない

 生成したマイナンバーは市町村を通じて個人に書類などで通知される。マイナンバーに紐付けるの
は「氏名、性別、生年月日、住所」の4項目で、「基本4情報」とも呼ぶ。個人の希望に応じて発行するICカードにも、マイナンバーと基本4情報が書き込まれる。

 番号の通知を受けた個人は2015年1月以降、税務などの手続き時にマイナンバーを書類に記入し、
各行政機関がこれをシステムに反映させる。利用が決まっているのが、国税庁のシステムや年金シス
テム、地方自治体の住民税システムなどだ。マイナ・ンバーは個人のほか、企業も従業員の源泉徴収の
申請などで使用する。このため企業は従業員のマイナンバーを管理する必要があり、人事システムな
どの改修も必要だ。

 個人にユニークな住民票コードがあるのに、新たにマイナンバーを導入するのは、将来の民間利用
も含めて番号の用途を広げるためだ。社会保障や税務のため、保険会社や証券会社は契約者のマイナ
ンバーを管理するほか、一般企業も従業員のマイナンバーを扱う。法律で用途を厳しく限った住民票
コードでは許されない使い方だ。

 行政システムでは、マイナンバーをシステム間の情報連携にも使う。国税庁が把握する個人の所得
に応じて社会保障を連動させるといった使い方を想定する。ただし情報の照合にマイナンバーは使わ
ず、代わりに行政システムごとに割り当てた「符号」を使う。同じ個人に対し、自治体システムでは
「符号A」を、国税システムでは「符号B」など異なる符号を振り、対応付けを情報提供ネットワークが管理する仕組みである。「仕組みが複雑でコストがかさむ」といった批判もあったが、芋づる式に個人情報が流出するリスクは減らせるとする。

●番号から顧客の転居先を追跡

新たに調達するIT基盤のうち、lCカードは本人確認手段として当初から利用可能になる。マイナンバーを生成する地方公共団体情報システム機構は、インターネット経由で工Cカードを認証する仕組みも用意する予定で、ネット銀行やオークションなどネットサービスでも信頼性の高い本人確認が可能になる見通しだ。

 今後の検討で民間利用の期待が高いのがマイーポータルである(図3)。例えば、マイ・ポータルは税
理士が税務を代行するなど、代理申請の機能が検討されている。この仕組みを企業に開放すれば、旅
行ビザ取得や新車/中古車の登録、保険手続きなど、様々な行政手続きを民間業者がネットで代行する
サービスが可能になる。

 一方で実現のハードルが高いのが、マイナンバー自体の民間利用である。現行法案では禁じられて
おり、法案の見直しが必要だ。個人情報保護の義務を負うため企業側も慎重に見ているが、一部では
利用したいという声がある。大別すると「顧客リストの名寄せ」「顧客の追跡」の二つがある。

 名寄せの一例が、金融機関が顧客口座にマイナンバーを紐付け、業務を効率化する使い方である。
一人で複数開設している銀行口座を名寄せしてペイオフ制度の管理業務を効率化したり、保険サービ
スの不正利用を追跡したりできるという。

 顧客の追跡も金融機関から要望がある。顧客の転居で郵送物などが不達になっても、マイナンバー
から基本4情報を参照し、転居先を突き止める。日本経済団体連合会では様々な業界から意見を集約
しており「アイデア段階だが宅配に用いたり、製造業がリコール製品の購入者を追跡したりする用途
が挙がっている」という。

 ただ公共性が認められ消費者の利益になる用途でも、本人の同意なしに住所を開示する是非は問わ
れる。そこでマイ・ポータルを活用し、郵送物の不達やリコールのお知らせを消費者に通知するとい
った活用形態も提案されている。

 向井審議官は「具体的な使い方を提案してもらえば、我々は前向きに議論する」と話す。制度の使
い勝手は、企業からのアイデアにもかかっている。

 

Update 2016/05/01  Create 2012/09/01

 

 

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”環境に優しい” ”効率的” だけがスマートでは無い様です。この夏、3万円の扇風機がバックオーダーを抱える程、売れていたらしい。”気持ちいい”も”スマート”のキーワードだと思う。

  

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