税金は,①m人の綸与や企業の利益などの「所得」に対して課される税金,②相続税・固定資産税のように「財産」の移転や保有に対して課される税金,および③消費税・酒税のよ引・こ「消費」に対して課される税金のいずれかに分類されます。このうち企業の会計と直接に関係するのが①の所得に対する課税です。
その企業が個人企貰であれば,その利益は事業主の他の所得と合算され,所得税法に基づいて事業主に所得税がかかります。他方,株式会社のような会社形態の企業には,法人税法に基づく法人税が,会社に対して直接的に課されます。所得税も法人税乱課税所得の額に所定の税率を乗じて計算します。この課税所得を算定するための会計が税務会計です。
課税所得の金額は,商法の規定に基づいて計算された当期純利益を基礎とし,これに税法特有の調整を加えて算定されます。たとえば他の企業から受け取った配当金は,当期純利益の計算に含められていますが,これは他の企業が課税後の利益を分配したものですから,配当を受け取った企業でこれに課税が行われると,二重課税になってしまいます。そこで法人税法は受取配当金を課税所得に含めないことにしています。
また企業が取引先の接待などに支出lしか交際費は,当期純利益の計算では費用として控除されていますが,法人税法は所定の限度を超える交際費を,課税所得計算において控除できないことにしています。したがって限度超過額があれば,これを加え戻さなければなりません。
これらが税法特有の調整項目の一一例です。
損益計算書の当期純利益
十 税法特有の加算項目
(たとえば交際費の限度超過額)
一 税法特有の減算項目
(たとえば受取配当金)
課税所得の額
納税者は誰でも,税金を少なくしたいものです。そのためには課税所得計算の基礎となる当期純利益の令額を,税法が認める範囲内で,できるだけ少なくなるように計算しておく必要があります。法人税法や所得税法が企業の利益計算に影響を及ぼすのはこのためです。税務会計は,財務諸表の作成と報告を目的とした会計ではありませんが,企業の利益計算に重要な影響を及ぼしますから,本書でも必要最小限の範囲で税法にも言及します。
Create 2013/11/05
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